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風力発電の稼働率アップを実現、AIが故障を予知する新技術

NEDO、東京大学、産総研がAIを活用した風車の故障予知技術を開発。風力発電の設備利用率を2%高めることに成功したという。


 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と東京大学および産業技術総合研究所は、風車の状態監視データとAIを活用した故障予知技術を開発したと発表した。国内の風車は部品の故障や事故によるメンテナンスのための停止時間が長く、海外の風車と比較して運転時間が短くなっていたが、この成果により、停止時間を大幅に短縮し、風力発電の設備利用率を2%向上できることを確認したという。

 今後の導入拡大が期待されている風力発電。しかし、日本では海外と比較すると、複雑な地形、気象条件などが影響し、風車の故障よる交換作業など、メンテナンスのための停止時間が長く、設備利用率は低い水準に留まっている。

 こうした中で、NEDOの事業「スマートメンテナンス技術研究開発(分析)(リスク解析等)」で3社は、故障や事故によるメンテナン伴う風車の停止時間を削減し、設備利用率を向上させることを目的として、風車に設置されているCMS(Condition Monitoring System)データなどとAIを活用した異常検知・故障予知技術を開発した。今回の成果を活用することで、風車の停止時間を大幅に短縮し、風力発電の設備利用率を21%から23%に高められることを確認したとする。NEDOの試算によると、全国の風車の年間設備利用率が1%向上すると、約8.4万世帯分の年間消費電力量を発電できるという。

開発したメンテナンス技術 出典:NEDO

 今回、設備利用率を向上させるために、異常の兆候検知と機器点検時間の短縮に取り組んだ。まず、風力発電の実機における軸受損傷進展実験を行い、ごく初期の損傷から故障に至るまでの振動の変化を確認した上で、東京大学と産業技術総合研究所が所有するAIの技術を適用し、風車用CMSデータを分析する方法を検討した。

 その結果、これまで困難とされてきた大型部品(主軸・増速機軸受)の異常兆候を検出可能な技術を開発し、さらに部品損傷進展モデルを活用した診断予測技術も開発することに成功した。これらの技術を適用し、国内にある43基の風車で実証した結果、交換意思決定の1~3カ月前に異常兆候を検知し、約9割の異常検知率を達成した。これにより、停止時間の大幅短縮による風力発電の設備利用率向上を実現できる。

 さらに、風車の運用実態を詳細に調査、分析を行い、これまで収集できなかった風車運用に関する情報の獲得を実現し、データを整理した。これらをもとに、ITを活用したタブレット情報蓄積装置「SMS(Smart Maintenance System)プラットフォーム」を開発した。同プラットフォームの仕組みを用いて現場作業を行った結果、メンテナンスの作業効率を向上させ、機器点検時間を最大40%短縮できることが確認できたという。

「SMS(Smart Maintenance System)プラットフォーム」のイメージ 出典:NEDO

 今後は、同研究開発の成果を広く普及し、風力発電の設備利用率向上につなげていくため、CMS(Condition Monitoring System)データなどについて、各事業者が自社の秘匿情報を適切に保護した上で共通に利用できるデータベースの構築や、同研究開発の成果をまとめたe-ラーニング教材の発信等により、スマートメンテナンスのさらなる普及を推進する。




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